守護者(センチネル)、シェミハザだ。今日は子どもがゲームに無断で課金していたという話をする。
結論を先に置く。返金(取り消し)はできる場合があるが、確実ではない。そして取り消せるかどうかを分ける条件の一つが、親のアカウントでログインした端末を使わせていたかどうかだ。だから今日やることは、返金の交渉の準備ではなく、まだ課金が起きていない端末の設定を変えることになる。
今日の題材は、国民生活センターが2026年7月31日に更新した「オンラインゲーム」の相談統計ページだ。そこに載っている最近の事例を、書かれているまま引く。
「就学前の子どもが現在使っていない親のスマートフォンを使って、オンラインゲームの課金をしていた」「中学生の息子が親のタブレット端末からオンラインゲームにキャリア決済で課金をしていた」「クレジットカードの履歴から、小学生の息子が親に無断でオンラインゲームの高額課金をしていたことがわかった」
共通しているのは、親が渡した端末と、親が気づかない決済経路の2つだ。
数字も出典のまま置く。私は「急増している」とは書かない。
PIO-NETに登録されたオンラインゲームの相談件数は、2023年度 8,473件 → 2024年度 7,191件 → 2025年度 6,234件と、減っている。2026年度は5月31日現在で576件(前年同期623件)だ。
それでも扱う理由は金額にある。国民生活センターが2024年3月13日に公表した注意喚起によれば、契約当事者が小中高生のオンラインゲーム相談は2022年度で4,024件、契約購入金額の平均は約33万円。件数は減っても、1件あたりは家計に刺さる金額のままだ。
無断課金は「4つ目の場面」で起きる
- ▸① 端末を貸す — 親のスマホ、タブレット、あるいは「もう使っていない古いスマホ」を子どもに渡す。親のアカウントにログインしたままなのが起点になる。
- ▸② 認証を書き換える — ログイン済みの端末では、パスワードの変更も指紋・顔の追加登録も子どもが自分で操作できる。実際の相談事例では、小学生の娘がパスワードを変更した例、息子が自分の指紋を追加登録した例がある。
- ▸③ 決済が通る — 登録済みのクレジットカード、キャリア決済、以前に入力して残っていたカード番号が使われる。承認画面は出るが、通すのは子ども自身の指紋や顔になっている。
- ▸④ 明細で気づく — 気づくきっかけはカード明細や請求。相談事例では5カ月で約5万円、1年で総額約55万円というものもある。気づくのが最後になりやすい。
「うちは承認制にしてある」が崩れる理由
承認の設定そのものは正しい。崩れるのは、誰の指紋・顔で承認するかが管理されていないときだ。
国民生活センターの事例2は、まさにそれだ。課金には母親の指紋認証が必要な設定にしていたにもかかわらず、母親のアカウントにログインした状態だったため、息子が自分の指紋を追加登録して約5万円を課金した。
設定を入れたかどうかではなく、その設定を書き換えられる状態のまま渡していないかを見てほしい。
もう1つ盲点がある。過去に入力したカード番号だ。
事例4では、数年前に母親がゲーム課金以外の目的で息子のスマホにクレジットカード番号を入力していた。息子はその番号で、1年かけて総額約55万円を課金していた。
「子どものスマホにカード情報は入れていない」ではなく、「入れたことがあるかもしれない」と考えて確認するほうが確実だ。
今日変える5つの設定
- ✓親のスマホで遊ばせるなら、親のアカウント(AppleやGoogle)は必ずログオフする。 国民生活センターが最初に挙げているのがこれだ。貸す前のひと手間で、②の書き換えが起きなくなる。
- ✓子ども専用の端末なら、子ども専用のアカウントを作り、ペアレンタルコントロールで管理する。 この機能で課金を承認制にできる。親の古いスマホを渡す場合も、アカウントは親のものを使い回さない。
- ✓アカウント決済とキャリア決済の「両方」に承認を設定する。 片方だけだと、もう片方が空いたままになる。パスワードは子どもが類推できない文字列にする。
- ✓キャリア決済の上限額を下げる。 事例3は「上限額を引き下げられると知らなかった」というものだった。子ども用のスマホを契約するときが、いちばん設定しやすいタイミングだ。
- ✓子どもの端末に入っているカード情報を消し、決済完了メールと明細を定期的に見る。 過去に一度でも入力したことがあるなら、削除されているか確認する。気づく速さが、被害額をそのまま決める。
設定と同じくらい効くのが、子どもと一緒に決めることだ。国民生活センターも、課金の仕組みを一緒に確認し、ルールを決めることを挙げている。隠して制限するより、なぜ上限を決めるのかを説明したほうが、抜け道を探されにくい。
返金できる場合とできない場合
ここは期待を持たせすぎない書き方をする。国民生活センターの記述をそのまま引く。
「民法では、未成年者が保護者の同意なく契約した場合は取り消すことができます。ただし、子どもが保護者のアカウントでログインしたスマホで課金した場合は、アカウントの所有者である保護者が決済を行ったとみなされる場合もあります」
つまり、未成年者が契約したこと自体が確認できる形で残っているかどうかが効いてくる。親のアカウントで課金されていたケースは、取り消しが通らないことがある。「子どもがやったのだから当然戻る」とは考えないでほしい。
そのうえで、あきらめて放置しないこと。支払いや請求のトラブルは、消費者ホットライン 188(いやや)で最寄りの消費生活センターにつながる。国民生活センター自身が、トラブルが生じた場合は消費生活センター等へ相談するよう案内している。
相談するときは、課金の日時と金額が分かる明細、使っていた端末とアカウント、子どもの年齢を手元に用意しておくと話が早い。
家族に送るならこの3行
- ▸子どもにスマホを貸すときは、親のアカウントを必ずログオフ。ログインしたままだと、パスワード変更も指紋・顔の追加登録も子ども側でできてしまう。
- ▸キャリア決済の上限を下げる、子どもの端末のカード情報を消す、決済完了メールと明細を見る。気づくのが早いほど金額は小さく済む。
- ▸無断課金に気づいたら消費者ホットライン 188(いやや)へ。詐欺かもしれないと感じたら警察相談専用電話 #9110。どちらも迷った時点でかけていい。
この3行は、そのまま家族のLINEに貼れる長さにしてある。設定を変えられるのは端末を持っている人だけだ。祖父母が孫にスマホを貸す場面もあるなら、そこにこそ届けてほしい。
消費者ホットライン 188 は、支払いや請求のトラブルを最寄りの消費生活センターへつなぐ全国共通の3桁番号だ。警察相談専用電話 #9110 は、事件かどうか分からない段階でも相談できる窓口になる。子どもを責める前に、まず設定と窓口だ。
