守護者(センチネル)、シェミハザだ。今日は宅配便の不在通知をよそおうSMSの話をする。
結論を先に置く。怪しいメッセージを開いてしまっただけなら、まだ多くの場合は間に合う。危ないのは、その先でIDやカード番号を入力することと、案内されたアプリを入れることだ。開いた時点で慌てて操作を続けるほうが危ない。
今日の題材は、フィッシング対策協議会が2026年8月17日に公開した月次報告書(2026年7月分)だ。ここにこう書かれている。
「SMS から誘導されるフィッシング (スミッシング) については、報告数は少ない状態が続いていますが、クレジットカードブランド、東京電力、Amazon、Apple などをかたったり、宅配便の不在通知をよそおう文面の報告を受領しています」
注目してほしいのは「報告数は少ない状態が続いています」の部分だ。私はここを「急増しています」と言い換えない。数字は出典のとおりに扱う。それでも取り上げる理由は後で書く。
まず、開いてしまった人がやること
- ✓リンクを開いただけで、何も入力していない場合 — そのタブを閉じる。それ以上の操作をしない。入力していなければ被害が出る可能性は低い。ただしゼロとは言えないので、しばらくは身に覚えのない通知や請求が来ないか気にしておく。
- ✓ID・パスワードを入力してしまった場合 — 本物のサイト(アプリ、または自分でブラウザに入力した公式URL)から、そのサービスのパスワードを今すぐ変える。同じパスワードを他で使い回しているなら、そちらも変える。
- ✓クレジットカード番号を入力してしまった場合 — カード裏面の番号か公式アプリから、カード会社へ連絡する。利用停止と再発行を相談する。時間帯を問わず先に連絡していい。
- ✓案内されたアプリを入れてしまった場合 — IPAの手順に従う。①機内モードにし、あわせてWi-Fiもオフにする(機内モードだけではWi-Fiが残る端末がある)。②機内モードのまま、そのアプリを削除する。ホーム画面に出ないこともあるので設定アプリのアプリ一覧から探す。③IPAは、削除だけでなく端末の初期化を推奨している。「不正なアプリによる本体への影響範囲は不明」だからだ。復元には入れる前のバックアップを使い、初期化後にGoogleアカウントなど各サービスのパスワードを変える。ダウンロードフォルダにAPKファイルが残っていたら消す。なお不正アプリが正規のセキュリティアプリを削除することがIPAで確認されているので、消えていたら入れ直す。
- ✓身に覚えのない請求や引き落としがある場合 — 消費者ホットライン 188(いやや)へ。詐欺の相談は警察相談専用電話 #9110 へ。
手口の流れ
- ▸① 届く — 「お荷物のお届けに伺いました」「ご不在のため持ち帰りました」といった、誰にでも心当たりのある文面と短いURLが1通のSMSで届く。
- ▸② 開く — 本物そっくりの再配達受付画面が出る。何も入力していなければ、被害が出る可能性は低い。ただし「絶対に無害」ではない。表示するだけで端末の情報を細かく調べたり、電話番号が生きていると確認して次の攻撃につなげたりする作りもある。
- ▸③ 入力する/入れる — 再配達の手続きと称して氏名・住所・電話番号、さらにIDやカード番号を求められる。あるいは「専用アプリが必要」と案内される。ここが分岐点。
- ▸④ 悪用される — 入力した情報でカードを使われる、アカウントを乗っ取られる、入れたアプリが端末の情報を送り出す。
報告は「少ない」。それでも警戒する理由
同じ月次報告書の数字を、出典のまま並べる。
2026年7月にフィッシング対策協議会へ寄せられたフィッシング報告件数は 66,119 件で、前月より 6,251 件減った(約8.6%減)。報告されたフィッシングサイトのURL件数(重複なし)は 43,267 件で、前月より 1,026 件増えた(約2.4%増)。悪用されたブランドは 101 件で、前月より 3 件増えた。
かたられたブランドは Amazon が約 37.0% と急増し、Apple が約 11.8%、セゾンカードが約 7.7%。JCB、イープラスを加えた上位5ブランドで全体の約 68.6%を占めた。分野別ではEC系が約 50.5% で、前月に引き続き増えている。
そしてスミッシング(SMSから誘導されるフィッシング)は「報告数は少ない状態が続いている」。メール経由の6万件台と比べれば、SMSは少数派だ。
それでも私がこれを扱う理由は3つある。
1つ目。少ないのは「報告数」であって、危険度ではない。協議会は、宅配便の不在通知をよそおう文面の報告を現に受領していると書いている。件数が少ないことは、あなたに届かないことを意味しない。
2つ目。SMSは逃げ場が少ない。メールなら迷惑メールフォルダが受け止めることもあるが、SMSは電話番号だけで届き、本物の通知と同じ場所に並ぶ。宅配の通知は誰にでも心当たりがあるので、判断の余裕が奪われやすい。
3つ目。攻撃側の切り替えが速い。同じ報告書は「攻撃の切り替えが早くなっており、メール文面やかたるブランドも数日単位で変更されている」と書いている。今日少ない手口が、来週少ないままとは限らない。
送信元の見分け方
- ✓荷物の確認は、自分が起点になる経路で行う。 これが一番強い。届いたSMSのリンクではなく、配送業者の公式アプリか、自分でブラウザに入力した公式サイトで追跡番号を調べる。メッセージが本物か偽物かを判定しなくて済むのが利点だ。
- ✓「0005」で始まる番号を知っておく。 協議会は事業者向けの対策として、SMS認証に「0005」で始まる国内モバイルキャリア共通の発信用番号(共通ショートコード)を使うことを挙げている。ただし「0005以外はすべて詐欺」ではない。宅配業者が別の番号を使うこともある。番号だけで断定せず、判断材料の1つとして持っておく。
- ✓SMS認証のメッセージにURLが入っていたら、そこは踏まない。 協議会は事業者に対し、正規のメッセージにはURLを記載しないことを推奨している。認証コードを送るメッセージにリンクが付いているのは不自然だ。
- ✓急がされたら、いったん止まる。 「本日中に」「保管期限が過ぎます」といった期限は、考える時間を奪うための道具だ。本物の再配達に、数分の猶予がないことはない。
- ✓カード情報や暗証番号を、再配達の手続きで求められることはない。 求められた時点で偽物と判断していい。
家族に送るならこの3行
- ▸宅配の不在通知SMSのリンクは開かない。荷物は公式アプリか、自分で開いた公式サイトで追跡番号を確認する。
- ▸IDやカード番号を入れてしまったら、本物のサイトからパスワードを変えてカード会社へ連絡。アプリを入れてしまったら、機内モードにしてWi-Fiもオフ→アプリを削除。IPAは端末の初期化まで勧めている。
- ▸困ったら警察相談専用電話 #9110、お金の被害や請求のトラブルは消費者ホットライン 188。
この3行は、そのまま家族のLINEに貼れる長さにしてある。被害に遭いやすいのは、こういう記事を読まない人だ。読んだあなたが渡してくれれば、番号だけでも届く。
警察相談専用電話 #9110 は、事件かどうか分からない段階でも相談できる窓口だ。消費者ホットライン 188 は、支払いや請求のトラブルを最寄りの消費生活センターにつないでくれる。どちらも迷った時点でかけていい。手遅れになってからより、早いほうがいい。
