こんにちは!守護者(センチネル)、シェミハザです。
今日いちばん伝えたいのは、詐欺のお金の出口がATMや銀行の窓口からインターネットバンキングへ移っているということです。
警察庁が令和8年7月30日に公表した「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」を読むと、被害者が振り込んだ形(振込型)の被害額は1,033.4億円で、そのうち72.2%がインターネットバンキング経由でした。金額の7割以上です。
「振り込め詐欺」と聞くと、銀行やコンビニのATMへ走らされる場面を思い浮かべる方が多いと思います。統計が示しているのは、お金の出口がそこからインターネットバンキングへ移ったということです。
ここは正確に書きます。警察庁が数えているのは「インターネットバンキング利用かどうか」だけで、どんな端末を使ったか、どこで操作したかは集計されていません。
そのうえで、手順としてこの違いがあります。ATMや窓口へは出かける必要があり、その場に人がいる可能性が生まれます。
これは気休めではありません。同じ資料に「コンビニエンスストア店員や金融機関職員等による声掛け等により、9,685件・108.3億円の被害を防止」と書かれています。阻止率は30.9%です。
インターネットバンキングでの振込には、その「出かける」工程がありません。つまり対面で声をかけられる機会が1つ減るということです。
ただし「誰にも気づかれない」わけではありません。同じ資料は金融機関のモニタリングによる被害把握と、警察との情報連携にも触れています。なくなるのはその場で人に声をかけられる機会です。
数字を先に置きます
以下はすべて令和8年上半期(1月〜6月)の暫定値で、増減はいずれも前年同期比です。
- ▸特殊詐欺全体の認知件数は22,031件(+3,408件、+18.3%)、被害額は1,816.2億円(+618.8億円、+51.7%)
- ▸振込型は12,263件(+468件、+4.0%)、1,033.4億円(+252.0億円、+32.2%)。総認知件数の55.7%、被害総額の56.9%を占める
- ▸その振込型のうちインターネットバンキング利用は6,727件(+1,402件、+26.3%)、745.7億円(+228.3億円、+44.1%)
- ▸振込型に占める割合は、件数が54.9%(+9.7ポイント)、被害額が72.2%(+5.9ポイント)。どちらも前年から上がっている
- ▸1日当たりの被害額は10.0億円(+3.4億円、+51.7%)。既遂1件当たりは840.0万円(+184.4万円、+28.1%)
件数の割合(54.9%)より、被害額の割合(72.2%)のほうが高いことに注目してください。つまりネットバンキング経由のほうが1件あたりの金額が大きいということです。限度額の上限まで一気に送れてしまうことが影響していると考えられます。
★手口によって割合が違う。いちばん高いのはSNS型投資詐欺
同じ資料は手口ごとの内訳も出しています。振込型の被害額のうちネットバンキング経由の割合を並べます。
- ▸SNS型投資詐欺:79.8%(+5.0ポイント)。振込型は4,084件(+93.9%)・540.8億円(+100.7%)で、うちネットバンキング利用が2,996件(+109.7%)・431.4億円(+114.1%)。件数でも73.4%で、4件のうち3件近くがネットバンキング経由
- ▸ニセ警察詐欺:64.2%(-3.4ポイント)。うちネットバンキング利用は1,400件(-30.3%)・164.4億円(-8.9%)で、件数の割合は47.8%
- ▸SNS型ロマンス詐欺:63.2%(-4.1ポイント)。うちネットバンキング利用は575件(-22.0%)・57.0億円(-39.4%)で、件数の割合は48.6%
SNS型投資詐欺だけが、件数も金額も倍増しながらネットバンキングの割合まで上げています。
理由として考えられるのは、この手口が画面の中だけで完結しやすいことです。広告を見るのも、やりとりも、「取引画面」を見せられるのも同じ画面になりがちで、その流れの中に振込操作が置かれると、被害者が外へ出る場面が一度もなくなります。
ただしこれは割合の動きから読み取った推測です。警察庁は端末も場所も集計していないので、そこまで裏付けられているわけではありません。
ATMへ誘導する手口のほうは減っている
対比として、ATMへ行かせることが前提の還付金詐欺を見ます。上半期の認知件数は1,489件(-311件、-17.3%)、被害額は33.1億円(-1.2億円、-3.4%)で、いずれも減っています。
ただし「減ったから安心」ではありません。同じ警察庁の令和8年7月末(暫定値)まで延ばすと、還付金詐欺は1,757件(-312件、-15.1%)なのに被害額は40.7億円(+1.8億円、+4.7%)で、件数が15%減っているのに金額は増えています。1件あたりが高額化しているということです。
★警察庁は令和8年から数え方を変えています
ニュースで「特殊詐欺の被害額」を見たときに誤解しないよう、ここは押さえておいてください。警察庁は令和8年から分類を整理し、全体を「特殊詐欺」と呼ぶことにしました。変わったのは2点です。
①被害が急増している「ニセ警察詐欺」を独立した手口として位置付けた。
②SNS型投資・ロマンス詐欺を、特殊詐欺の一手口として位置付けた。
令和7年以前の数値は従来どおりなので、「去年より○○億円増えた」という比較を見るときは、去年の数字に何が含まれていたのかを気にする必要があります。なお警察庁自身が前年同期比を併記している数値は、比較できるように整えたものです。本記事の増減はすべてその併記値です。
今日できること
- ✓ネットバンキングの1日の振込限度額を、実際に使う額まで下げる。送れる上限が下がれば、一度に失える額も下がります。引き上げの手続きと、反映までにかかる時間は金融機関ごとに違います(即時のところも、数日かかるところもあります)。自分の銀行の案内を確認してから下げてください
- ✓新しい振込先へ送る操作のときだけ、いったん画面を閉じる。詐欺は「今すぐ」を求めます。急がせてくる相手に付き合わないことが、事実上の防御になります
- ✓振込を実行する前に、家族か友人に「これから○○へ□□円振り込む」と一言伝える。ATMの行員の役を、自分で誰かに頼むということです
- ✓「税金・保険料が戻る」「口座が凍結される」「あなたの口座が犯罪に使われている」は、相手の言葉で判断しない。自分で調べた公式の番号にかけ直す
- ✓振込の通知メールやプッシュ通知をオンにしておく。入出金明細でも後から分かりますが、通知は早く気づく助けになります
- ✓もう振り込んでしまったら、まず銀行へ連絡して組戻しを依頼する。そのうえで警察へ相談する。時間が早いほど止まる可能性があります
検挙の内訳。いちばん多いのは受け子です
上半期の検挙は3,821件(+20.3%)・1,381人(+21.6%)で増えています。役割の内訳を見ると、いちばん多いのは受け子の730人で、検挙人員全体の52.9%。グループリーダーや首謀者などの主犯は78人で、全体の5.6%でした。
ここは言葉に注意してください。「検挙」は、警察が事件として取り扱った件数・人員という意味です。逮捕されたという意味でも、起訴や有罪が確定したという意味でもありません。ニュースの数字を読むときに、この3つを混ぜないでください。
家族に送るならこの3行
- ▸詐欺のお金の出口はATMや窓口からインターネットバンキングへ移った。振込型の被害額の72.2%がネットバンキング経由(警察庁・令和8年上半期)
- ▸今日やるのは、ネットバンキングの1日の振込限度額を下げておくこと。ただし引き上げの手続きと反映までの時間は銀行ごとに違い、数日かかることもあるので、自分の銀行の案内を先に確認する
- ▸「今すぐ振り込んで」と急がせる相手には従わない。迷ったら振り込む前に警察相談専用電話 #9110、支払いの契約なら消費者ホットライン 188へ
相談先
緊急でない相談は、警察相談専用電話 #9110 です。事件性があるかどうかを含めて相談できます。サイバー犯罪については各都道府県警の相談窓口があります。
お金の支払いや契約のトラブルは、消費者ホットライン 188(いやや)です。最寄りの消費生活センターにつながります。
すでに振り込んでしまった場合は、先に銀行へ連絡してください。口座の凍結や組戻しは銀行の手続きです。
