自社サーバーで運用しているGitLabに、認証を一切通っていない攻撃者が、GitLabサーバー上のファイルを任意に読み取れる欠陥が見つかりました。CVE-2026-85706 です。リポジトリのコミットAPIで、パスの閉じ込めが不十分なうえ認証の強制が欠けていたことが原因だと、GitLabは説明しています。
この欠陥はすでに攻撃に使われています。米国のCISAは2026年9月11日、これを「悪用が確認された脆弱性(KEV)」のカタログに登録しました。
やることは1つです。19.1.8/19.2.6/19.3.2 のいずれかへ、今すぐ更新してください。
今すぐ行う対策
- ✓自分が「self-managed」かどうかを先に確かめる。 GitLabの公式リリースは、GitLab.comはすでに修正版で動いており、GitLab Dedicatedの利用者は対応不要と明記しています。対応が必要なのは、自分たちでインストールして運用しているGitLab(self-managed)だけです。
- ✓バージョンを確認する。 管理画面の「ヘルプ」や `/help` ページで現在の版が分かります。影響を受けるのは 18.7以上19.1.8未満/19.2系で19.2.6未満/19.3系で19.3.2未満です。18.7より前の版も修正版ではないので、同じように更新してください。
- ✓19.1.8/19.2.6/19.3.2 のいずれかへ更新する。 自分の系列に合うものを選びます。GitLabは「ただちにアップグレードすることを強く推奨する」と書いています。
- ✓公式は回避策を出していません。 このリリースのページには、設定変更やWAFルールによる緩和策の記載がありません。更新以外の手段は公式には示されていないため、更新を後回しにする選択肢は実質ありません。
- ✓インターネットに直接公開しているインスタンスから先に直す。 未認証で成立する攻撃なので、外から到達できるものほど危険です。
このスコアの出どころを明記します。 10.0 という値は、採番元であるGitLab自身(CNA)がCVSS v3.1で付けた評価です(ベクタは `CVSS:3.1/AV:N/AC:L/PR:N/UI:N/S:C/C:H/I:H/A:N`)。
2026年9月14日時点で、NVDのNISTによる分析は「Undergoing Analysis」のままで、NIST独自のスコアはまだ付いていません。NVDのページを開くと出てくる 10.0 は、このGitLabの値です。後日NISTが別の数字を出す可能性はあります。
「悪用されるかもしれない」ではなく、すでに悪用されている
ここがこの脆弱性のいちばん重要な点です。推測ではなく、公的機関が悪用を確認しています。
CISAはこのCVEを2026年9月11日にKEVカタログへ追加し、米国の連邦民間機関に対する是正期限を2026年9月14日に設定しました。あわせてCISAが公開しているSSVCの判定(2026年9月12日付、CISA Coordinator)は次のとおりです。
exploitation(悪用): active(実際に悪用されている)/ automatable(自動化可能か): yes / technicalImpact(技術的影響): total(全面的)
この3つが揃っているのは、攻撃がすでに動いており、しかも機械的に大量のサーバーへ仕掛けられるという意味です。是正期限は米国の政府機関に課されたもので日本の組織を拘束するものではありませんが、「もう狙われている」という事実は同じです。
何が読まれるのか
GitLabの説明は「サーバー上の任意のファイルを読み取れる」です。書き換えや命令の実行ではなく、読み取りに限られます。ただしGitLabのサーバーには、ソースコードだけでなく設定ファイルや各種の資格情報が置かれています。読み取りだけでも、そこから先に広がり得るとみるのが自然です。
弱点の種類は、NVDの分類が CWE-22(パストラバーサル)、CISAの分類が CWE-35(相対パスのたどり)で、いずれも「本来出てはいけない場所のファイルを、パス指定で外から取り出される」類の欠陥です。
なお、この脆弱性はHackerOneのバグバウンティを通じて s3ntago 氏から報告されたものだと、GitLabが謝辞に記しています。
対象と修正版
- ▸対象(CVE-2026-85706):GitLab CE/EE の 18.7以上19.1.8未満、19.2系で19.2.6未満、19.3系で19.3.2未満
- ▸修正版:19.1.8/19.2.6/19.3.2(2026年9月10日公開)
- ▸対応不要:GitLab.com(すでに修正版で稼働)、GitLab Dedicated(公式が「対応不要」と明記)
- ▸このリリースで修正されたCVEは全部で18件。 うちCRITICALは本件を含む2件です(18件にはCVE-2024-11222とCVE-2025-14871のように、採番年が過去のものも含まれます)
- ▸KEV登録:2026年9月11日(CISA)/是正期限:2026年9月14日(米国連邦民間機関向け)
同じリリースで直った、もう1件のCRITICAL
CVE-2026-87719(CVSS v3.1 で 9.9、GitLab評価)も同じ更新で修正されています。
こちらは GitLab EE 限定で、Duo Chatを使える認証済みユーザーが、細工したGraphQLのサブスクリプション引数でシリアライズ処理を迂回し、Advanced Searchの設定と、そこに含まれる資格情報を取得できるというものです。対象は 18.3以上19.1.8未満/19.2系で19.2.6未満/19.3系で19.3.2未満。
未認証で成立するCVE-2026-85706ほどの緊急性はありませんが、修正版は同じなので、更新すれば同時に塞がります。
外部に公開していたなら、更新だけで終わらせない
CISAはこのCVEについて、「Forensics Triage(侵害調査)」の対象という印を付けています。更新は入口を塞ぐだけで、更新前に読み取られたものは戻りません。外部から到達できる状態で運用していたなら、更新後に次を確認してください。
- ✓アクセスログで、リポジトリのコミットAPIへの不審なリクエストを探す。 見慣れないパス指定や、認証されていないアクセスが連続していないかを見ます。
- ✓サーバー上に置いていた資格情報を洗い出す。 任意のファイルを読める欠陥だったため、更新前にサーバー上にあった秘密情報は、漏れた可能性がある前提で扱うのが安全側の判断です。
- ✓心当たりがあれば、トークンや鍵を入れ替える。 どこまで読まれたかがログから確定できない場合、入れ替えが最も確実な後始末になります。
- ✓GitLab.comやDedicatedを使っているだけなら、ここは不要です。 対象はあくまで自社運用のインスタンスです。
GitLabは通常、第2・第4水曜にパッチをまとめて出し、深刻なものは臨時で出すという運用をしています。今回は臨時の「Critical Patch Release」でした。自社でGitLabを運用しているなら、このリリース告知を購読しておくと、次に同じことが起きたときの初動が早くなります。
