どの企業の事例か
今回紹介するのは、世界最大のスーパーマーケットチェーンである米国のウォルマート(Walmart)の事例です。 同社は「毎日お安く(Everyday Low Prices)」を掲げ、実店舗だけでなくEコマース事業にも注力しており、2023年度のEコマース売上は820億ドルを超えています。 近年、顧客のオンラインでの買い物体験をさらに向上させるため、生成AIの活用を積極的に進めています。
解決したかった課題
従来のEコマースサイトの検索機能は、顧客が具体的な商品名を知っていることを前提としたキーワード検索が中心でした。しかし、例えば「子供の誕生日パーティーの準備」といった漠然とした目的を持つ顧客にとっては、必要な商品を一つ一つ検索する必要があり、手間と時間がかかっていました。 ウォルマートは、このような「目的」ベースの買い物ニーズに応え、より直感的でシームレスな体験を提供することを課題としていました。
AIをどう使ったか
ウォルマートは、Microsoftとのパートナーシップのもと、Azure OpenAI Serviceを活用した生成AI検索機能を開発し、iOS、Androidアプリ、およびWebサイトに導入しました。 このシステムは、ウォルマートが持つ独自の膨大な商品データや顧客の購買データと、大規模言語モデル(LLM)を組み合わせています。 これにより、顧客が「サッカーの試合観戦パーティーに必要なもの」といった自然な言葉で目的を入力するだけで、AIが文脈を理解し、関連性の高い商品をカテゴリ横断で提案できるようになりました。
導入効果と見るべきポイント
- ▸従来のキーワード検索から、顧客の意図を汲み取った「目的ベース」の検索へと進化させ、買い物体験をより直感的で便利なものに変えた。
- ▸「誕生日会」と検索すれば飾り付けやゲーム、食器などをまとめて提案するなど、複数の検索やクリック、ページ移動の手間を削減し、時間短縮に貢献している。
- ▸社内向けにも「My Assistant」というAIアシスタントを5万人の従業員に展開し、文書要約やコンテンツ作成などの業務を支援し、生産性向上を図っている。
- ▸単なる技術導入に留まらず、顧客の「買い物」という行為そのものを、よりパーソナライズされ、効率的なものへと変革しようとしている点が重要。
日本企業が参考にできること
この事例は、Eコマースサイトを持つ多くの日本企業にとって参考になります。自社の商品データや顧客データを、生成AIと組み合わせることで、顧客一人ひとりのニーズに寄り添った新しい購買体験を創出できる可能性を示しています。特に、キーワード検索の限界を感じている企業は、顧客の「目的」や「解決したい課題」を起点とした検索機能の導入を検討する価値があるでしょう。小規模からでも、クラウドサービスを利用して同様の仕組みを構築することは可能です。
今日のAIニュース
参考リンク
- Walmart unveils new generative AI-powered capabilities for shoppers and associates (Microsoft News)↗
- How Walmart is using generative AI (Retail Dive)↗
- Walmart AI Success: How Walmart is Seeing Greater ROI with Gen AI Search (Spiceworks)↗
- Walmart revolutionizes shopping with AI-powered search (AI Use Case Hub)↗
