どの企業の事例か
モルガン・スタンレーは、投資銀行業務、証券業務、ウェルス・マネジメントなどを手掛ける世界有数の金融サービス企業です。 特にウェルス・マネジメント部門では、専門的な知見を持つファイナンシャルアドバイザーが顧客にサービスを提供しており、その業務品質の維持・向上が常に求められています。
解決したかった課題
同社のアドバイザーは、顧客へ最適な提案を行うために、年間7万件以上発行される市場調査レポートや投資戦略に関する文書など、膨大かつ複雑な社内ナレッジを参照する必要がありました。 従来の方法では、これらの膨大な情報の中から必要な情報を探し出すのに多くの時間がかかり、アドバイザーの生産性を下げる一因となっていました。
AIをどう使ったか
モルガン・スタンレーはOpenAIと提携し、GPT-4モデルを自社の膨大な社内ナレッジベースに特化させて活用する社内向けAIアシスタント「AskResearchGPT」などを開発しました。 このシステムは、アドバイザーが自然言語で質問を入力すると、10万件以上の社内文書の中から関連情報を検索・抽出し、その内容を要約して網羅的な回答を生成します。 これは検索拡張生成(RAG)と呼ばれる技術を活用していると見られ、社内のクローズドなデータに基づいた、信頼性の高い回答を実現しています。
導入効果と見るべきポイント
- ▸情報検索にかかる時間が劇的に短縮され、アドバイザーが顧客との対話やより戦略的な業務に集中できる時間を創出しました。
- ▸アドバイザーは必要な情報へ即座にアクセスできるようになったことで、より深く、パーソナライズされた質の高いサービスを顧客に提供できるようになりました。
- ▸この事例のポイントは、一般的なウェブ情報ではなく、企業が独自に蓄積した専門性の高い内部情報(ナレッジ)をAIに活用させることで、業務に特化した価値を生み出し、同時に情報セキュリティを確保している点です。
- ▸導入にあたり、厳格な評価フレームワークを構築し、回答の正確性を担保するための仕組み(引用元の文書表示など)を取り入れていることも、金融という規制の厳しい業界で成功した重要な要因です。
日本企業が参考にできること
この事例は、金融業界に限らず、法務、医療、製造業など、専門的な知識や社内マニュアルが大量に存在するあらゆる業界で応用可能です。社内に蓄積された「知の資産」をAIによって誰もが活用できるようにすることは、従業員の生産性向上とサービス品質の向上に直結します。まずは特定部署のFAQ対応や、社内規定の検索システムとして試験的に導入し、効果を測定しながら展開していくアプローチが有効でしょう。
今日のAIニュース
参考リンク
- Morgan Stanley Research Announces AskResearchGPT↗
- Enterprise Knowledge Management with LLMs: Morgan Stanley's GPT-4 Implementation - ZenML↗
- How Morgan Stanley, Stripe Use GPT-4 To Optimize Financial Customer Experience (CX) - Acceleration Economy↗
- How Morgan Stanley Is Training GPT To Help Financial Advisors - Forbes↗
