どの企業の事例か
トムソン・ロイターは、法律、税務、会計、コンプライアンスなどの専門家向けに情報サービスを提供する世界的なリーディングカンパニーです。長年にわたり蓄積してきた膨大な専門知識とデータを基盤に、生成AIなどの最新技術を組み合わせ、専門家の働き方を根本から変革するソリューションを開発・提供しています。
解決したかった課題
弁護士や法務担当者などの法律専門家は、日々膨大な量の法律文書、判例、規制情報の中から、特定の事案に関連する正確な情報を迅速に見つけ出す必要があります。 このリサーチ業務は非常に時間がかかり、生産性を上げる上での大きな障壁となっていました。 従来のキーワード検索では、関連性の低い情報も多くヒットしてしまい、本当に必要な情報にたどり着くまでに多大な労力を要していました。
AIをどう使ったか
トムソン・ロイターは、同社が提供する信頼性の高い法律実務コンテンツ「Practical Law」を基盤とした生成AIアシスタント「Ask Practical Law AI」を開発しました。 このツールは、ユーザーが自然言語で入力した複雑な法律に関する質問に対し、AIがPractical Law内の膨大な専門情報を検索・分析・要約し、出典を明記した形で具体的な回答を数秒で生成します。 この仕組みは、信頼できる社内データソースのみを参照して回答を生成するRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を活用しており、一般的な生成AIの課題であるハルシネーション(情報の捏造)のリスクを大幅に低減し、専門家が安心して利用できる信頼性を確保しています。
導入効果と見るべきポイント
- ▸これまで数時間から数日かかっていた複雑なリサーチ業務を数秒から数分に短縮し、弁護士や法務担当者の生産性を劇的に向上させています。
- ▸リサーチ業務の効率化により、専門家が付加価値の高い戦略的な業務やクライアントとの対話により多くの時間を割けるようになります。
- ▸回答には典拠となるPractical Lawのコンテンツへのリンクが明記されるため、ユーザーは情報の正確性を容易に検証できます。
- ▸注目すべきは、自社が持つ専門的で信頼性の高い膨大なナレッジをAIの基盤とすることで、情報の正確性と信頼性という、法務分野で最も重要な要件を満たしている点です。
日本企業が参考にできること
この事例は、専門的な知識や独自の社内データを保有する企業が、生成AIを活用する上での優れたモデルケースと言えます。自社の強みである信頼性の高いデータを基盤にRAGを構築することで、顧客向けの高付加価値サービスや、社内の専門業務を効率化するツールを開発できます。特に、情報の正確性が事業の根幹をなす金融、医療、そして法務のような業界において、汎用的な生成AIをそのまま利用するのではなく、自社データで「グラウンディング」するアプローチがいかに重要かを示唆しています。
