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第11号2026年11月1日発行 / 対象期間 10/26〜11/1Read in English

今週のAIニュース8選 — 最前線のモデルが「脆弱性の発見」と「創薬」に照準を合わせ、Mistralが1兆パラメータの重みを出した週

今週の総括

今週の軸は3つです。1つ目は最前線のモデルが「脆弱性の発見と修正」に照準を合わせたことです。GoogleはGemini 4 Carbonを、MistralはMistral Large 4の重みを出し、どちらも防御用途の数値を前面に出しました。Carbonは一部のサイバー防御者にしか提供されておらず、数値はどちらも各社が自ら示したもので、第三者の再現は確認できていません。2つ目は生命科学で、OpenAIは承認制の生物学向けモデルGPT-6 Rosalindを出し、Anthropicは6組織との創薬の取り組みとMithril Medicineの買収を公表しました(研究の大半は前臨床です)。3つ目は使い方を広げる値段と枠で、OpenAIはGPT-6.1 Terraを入力$1・出力$5で出し、ChatGPT ProとBusinessの契約者に月最大$500のAPIクレジットを付けました。Alphabetは第3四半期にGoogle Cloudが103%成長したと述べています。前の号でwatchingに挙げたMistral Large 4の重みは、10月29日に公開され、ライセンス文も確認できました。今週は、OpenAIの発表ページの多くがサーバーに拒否されて本文を開けず、項目にできなかった話題があります(watchingに記載)。

モデル・製品

Google、Gemini 4 Carbonを発表。サイバー防御の3つのベンチマークで首位を主張するが、使えるのは一部のサイバー防御者だけ

Googleが「最も強い」と呼ぶ新モデルを出したが、一般には出していない。

10月28日の発表です。Googleは、Carbonを「サイバーセキュリティと長時間の作業に強い最も強力なモデル」とし、Artificial Analysis Intelligence Index v5.0で首位の59だと書いています。防御の各段階の数値は、脆弱性の発見(SEC-bench Pro)が88.2%、悪用の検証(ExploitGym)が54.8%、修正パッチ(CWE-bench)が71.0%です。提供は、今週から一部のサイバー防御者へ、「Fairwind Program」を通して信頼できるパートナーへ段階的に広げるとし、開発者・企業・一般向けの提供は「できるだけ早く」とだけ書いています。米国政府の任意の公開前テストにも参加しています。価格は、Argonと同じ導入価格の入力$2・出力$10(100万トークン)で、導入期間が終わると入力$4・出力$20になります。

So What

Carbonは、いま申し込んでも使えるとは限りません。使えるのは、Googleが選んだ一部のサイバー防御者です。価格は導入価格で、期間の終わりの日付は発表に書かれていません。数値はGoogleの発表にあるもので、当サイトでは再現していません。提供を絞る理由は、発表には書かれていません。

モデル・製品

Mistral、Mistral Large 4の重みを公開。総約1兆・有効49Bのモデルで、第三者へのAPI提供には別の商用ライセンスが必要

前の号で待っていた重みが出た。自社で動かすのは自由だが、APIとして売るには許可が要る。

10月29日に公開されました。Hugging Faceのモデルカードは、総約1兆・トークンごとの有効49B(カードには「埋め込みと出力層を含めて52B」とあり、リポジトリ名の A52B はこちら)、コンテキスト1MトークンのマルチモーダルMoEで、画像とテキストを受け付けると書いています。公式の形式はFP8とNVFP4です。ライセンスは「Mistral Ecosystem Open-Weight License」で、MITの改変版です。「Model as a Service」事業を営む者(第三者に推論や追加学習をAPIやホスト型で使わせる者)は、商用目的の利用の前にMistralと別の商用ライセンスを結ぶ必要があります。自社内だけの利用と、Mistral公式製品経由の利用は、この条件の対象外です。Mistralは、コーディングでオープンウェイト首位とし、FrontierCode 2.0で19.7%、Terminal-Bench 4.0で41%(公開プレビューより13ポイント増)、Artificial AnalysisのCoding Agent Indexで48%(トークンは平均47%少ない)、Cyber Indexで51%と書いています。

So What

自分や自社で動かす分には、条件はほぼMITです。他社にAPIや推論の窓口として提供する場合は、先にMistralと商用ライセンスを結びます。この先、「オープンウェイト」と書かれたモデルでも、ライセンス文を読まないと使い方の可否は分かりません。ベンチマークの数値はMistralが公表したもので、「最高」「首位」はMistral自身の主張です。1兆パラメータなので、手元の環境で動かせるかは別の問題です。

モデル・製品

OpenAI、GPT-6.1 Terraを公開。入力$1・出力$5で、画像の理解とコンピューター操作に強い軽量モデル

OpenAIが、速くて安い画像対応モデルをAPIに追加した。

OpenAIのAPI更新履歴は、10月26日にGPT-6.1 Terraを公開したと記しています。モデルのページは、「画像の理解、正確なコンピューター操作、自然な文章」に向く速くて効率の良いモデルと説明しています。入力はテキストと画像、出力はテキストで、コンテキストは1,050,000トークン、モデルページの記載で最大入力は922,000・最大出力は128,000、知識の期限は2026年6月1日です。価格は100万トークンあたり入力$1、キャッシュ入力$0.05、出力$5で、入力が27.2万トークンを超えるリクエストは、入力が2倍、出力が1.5倍になります。BatchとFlexは50%安く、推論の強さは none から max まで選べます。ツール呼び出しにはResponses APIが必要です。

So What

画像や画面を読ませる処理を、安い単価で試せます。ただし、長い入力では単価が上がるので、27.2万トークンを超える使い方は、先に計算してください。ChatGPTでの提供状況は、OpenAIの発表ページを開けなかったため、確認できていません。「全員向け」という表現はOpenAIの要約にあるものです。

モデル・製品

OpenAI、生物学向けのGPT-6 Rosalindを公開。承認を受けた組織の内部研究だけが使え、価格は入力$15・出力$75

誰でも使えるモデルではなく、承認制の生命科学向けモデルとして出した。

API更新履歴の10月30日の項目です。GPT-6 Rosalindは、「科学ツールを使う、専門的な生物学の推論」を複雑な生命科学の研究に提供するモデルで、Rosalind Researchの承認を受けた組織が、許可された利用者による内部研究に使う場合に限り使えます(信頼できるアクセスのプログラム)。価格の表では、gpt-6-rosalindが100万トークンあたり入力$15・出力$75(長いコンテキストでは入力$30・出力$112.50)で、同じ表のgpt-rosalind-researchとgpt-rosalind-discoveryは入力$5・出力$25です。

So What

一般のAPI契約では使えません。研究機関や企業が対象で、承認の基準は、手元の資料では確認できませんでした。Anthropicも同じ週に、生命科学での取り組みを公表しています(次の項目)。ただ、Rosalindの性能の数値は、更新履歴にも価格の表にも載っていません。

研究

Anthropic、創薬で6組織と進めた取り組みを公表。1人会社Mithril Medicineを買収し、研究の大半は前臨床段階

AIを創薬の「一部の工程」ではなく、全体の工程に入れる試みの経過報告。

10月27日の記事です。Anthropicは、BigHat Biosciences、Bristol Myers Squibb、Divergence Labs、Enveda、Generate Biomedicines、The Column Groupの6組織と、数か月にわたり共同研究をしてきたと書いています。数字が出ているのは、Envedaの製造書類の確認(1,061ページで、人間が見つけた11件をすべて拾い、見落とされていた7件も指摘、人間のレビュー時間は25時間超から3時間未満へ89%減)、BigHatの約1,010の改変体を約10週間で試験、Generateの設計の1つはCAR-T細胞療法の遺伝子配列が標準より約70%短く、受容体の産生が約10倍といった点です。あわせて、筋ジストロフィー2種の治療を進めていた1人会社Mithril Medicineを買収したと書いています。創業者は、Claudeに11の外部ラボとの契約や実験の管理を任せ、18か月未満で、マウスでの有望な結果まで進めたとされます。

So What

数字はすべて、パートナーとAnthropicが自分で示したものです。記事も、研究の大半はまだ前臨床で、人での試験には届いていないと書いています。Mithrilの買収は、金額や条件が記事に書かれていません。創薬の「全工程にAIを入れる」という方針と、承認制の生物学向けモデルを出したOpenAIの動き(前の項目)が、同じ週に並んだことは確認できましたが、両社の成果を比べられる材料はありません。

資金・企業

Alphabet、第3四半期は売上が前年比25%増、Google Cloudは103%増。自社のモデルAPIは毎分約320億トークン

GoogleのAI需要を、Alphabet自身が数字で示した。

10月28日の決算説明会での、Sundar Pichai CEOの発言の編集済み書き起こしです。Alphabetの売上は前年同期比25%増で、年間換算で「半兆ドル」規模、Google Cloudの売上は103%増、検索のクエリの伸びは過去5年で最も高いと述べています。モデルについては、第一者のモデルAPIが毎分約320億トークン(前の四半期より40%多く、1年前の4倍超)を処理していると説明しました。Gemini 4 Argonは、開発者向けの利用が最初の1週間でGemini 3の3.5倍の速さで伸びたとし、社内ではChrome・広告・検索のチームが、コードを35%多く出しながらエラーは30%少なかったとしています。

So What

これは決算説明会での経営者の発言で、財務諸表そのものではありません。金額(ドル)の売上は、この書き起こしには出てきません。「年間換算」は、四半期の売上を4倍した見方で、年間の売上ではありません。Googleはクラウドの容量が足りないとも述べているので、需要が強いことと、使いたいときにいつでも使えることは、別の話です。

開発ツール

OpenAI、ChatGPTのProとBusinessの契約者に、月最大$500のAPIクレジットを付与。使わなかった分は繰り越せない

ChatGPTの契約で、別のAPI料金なしにAPIを試せるようになった。

API更新履歴の10月28日の項目と、公式のガイドです。対象は有料のChatGPT ProとBusinessで、契約から7日以上たっていること、ChatGPTのサブスクリプションとAPI組織の両方のオーナーであること、同じメールアドレスで連携することが条件です。月のクレジットは、Proの$100の階層で$100、$200の階層で$200、$500の階層で$500、BusinessはStandardが1席あたり$20、Premiumが1席あたり$100で、Businessは1ワークスペースあたり月$500が上限(席数分をまとめて共有)です。使わなかったクレジットは請求期間の終わりに失効し、繰り越せません。APIの支払い方法を登録しなくても、有効なクレジットがあればAPIを使えます。

So What

ChatGPT Proを契約している個人開発者は、追加費用なしでAPIを試せます。ただし、ガイドは「この特典が提供されている間」と書いており、続く期間は約束されていません。クレジットにもAPIのレート制限と利用規約がかかります。ChatGPTの無料版やPlusは対象に書かれていません。

開発ツール

Claude Code 2.1.311〜2.1.316。Opus 4.8の高速モードは11月30日で終了、作業ディレクトリ外への書き込みを止める設定が入る

Opus 4.8の高速モードを使っている人は、期限までに移行が必要。

GitHubのリリースに載っているのは2.1.311・312・314・316です(313と315は見当たりません)。2.1.316は、Opus 4.8の高速モードを10月30日付で非推奨とし、11月30日に削除すると書いています。削除後は、Opus 4.8で高速モードを求めるリクエストは標準のOpus 4.8へ戻らず、エラーになります。速度を保つには、Opus 5.5へ移るよう案内しています。2.1.314は `permissions.blockWritesOutsideWorkingDirectories` を追加し、Write・Edit・NotebookEditが、どの権限モードでも作業ディレクトリの外のパスを拒否するようにしました。VS CodeとClaude DesktopのCodeタブには、20万トークン超の会話が放置されると要約する「アイドル圧縮」が入りました。2.1.316は `CLAUDE_CODE_DISABLE_ULTRATHINK`、`CLAUDE_CODE_SUBAGENT_EFFORT`、ゲートウェイの共有予算(pooled budget)も加えています。

So What

Opus 4.8の高速モードを使っているなら、11月30日より前にOpus 5.5へ切り替えてください。切り替えないと、その日以降はエラーになります。作業ディレクトリ外の書き込みを禁じる設定は、自動実行を任せる前に入れておく価値があります。このリリースノートの変更点は、当サイトでは1件ずつ動かして確認していません。

継続監視(今号では確定情報が無かったもの)

  • GoogleのDeepMindは10月27日に「Genie 4」(リアルタイムのワールドモデル)を発表しました。Alphabetの決算説明会の発言には「ネイティブ音声つきで、安全で現実的な対話型の世界をリアルタイムでシミュレーションする」「ロボットとエージェントの訓練の部品」とあります。ただし、DeepMindの発表ページの本文を取得できず、機能の詳細を確認できていないので、項目にしていません。
  • OpenAIは10月29〜30日に、フロンティアモデルの暴走の検知方法、Model Specの更新、コミュニティの安全報告と10代向けの保護、AIの学習への意思表示をrobots.txtで示す仕組みを公表しています。公式フィードの要約は確認しましたが、発表ページはサーバーに拒否されて本文を開けなかったので、項目にしていません。10月27・28日のOracle・ServiceNowとの提携拡大も同じ理由で見送りました。
  • Gemini 4 Carbonは、開発者・企業・一般向けの提供時期が「できるだけ早く」とだけ書かれています。CEOは決算説明会で、より効率の良い版を含む新モデルが「まもなく」出ると述べています。出たら価格と提供範囲を確認して扱います。
  • GPT-6.1 Terraが、ChatGPTのどのプランで使えるかは、OpenAIの発表ページを開けず確認できていません。開けたら扱います。
  • 前の号で挙げた、OpenAIのモデルとCodexのGoogle Cloud Model Garden提供(一般提供は「今後数週間」)は、今週の公式フィードに続報が見当たりませんでした。
  • AnthropicのAI for Science拡大(10月28日。20の財団・研究機関にClaudeのクレジットを提供)と、NVIDIAのRTX Sparkノートの新モデルとNemotron 3.5 Transcribe(10月28日)は確認しましたが、読者にとっての変化を書ける材料が薄いので今回は見送りました。
  • 資金調達・買収は、一次情報(当事者の発表)で確認できたのはAnthropicのMithril Medicine買収だけで、金額は書かれていません。

各項目の「一次」は当事者自身の発表(公式ブログ・プレスリリース・公式ドキュメント等)、「参考」は報道・第三者分析です。数値や日付は発行時点で確認したものを記載しています。

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